手話言語の国際デー と 国際ろう者週間

9月23日は何の日でしょうか? 今年は22日ですが、9月23日が秋分の日になる年もありますね。不動産の日とか万年筆の日でもあるそうですが、宮通研で9月23日を取り上げるというコンテクストを考えるとどうでしょう?

 

9月23日は、2017年12月19日に国連総会で決議された「International Day of Sign Languages(手話言語の国際デー)」です。

1951年9月23日は世界ろう連盟が設立した日です。つまり9月23日は、手話とろう文化の維持継承とろう者の人権を擁護する世界的組織の誕生日です。

世界には約7,200万人のろう者がおり、300以上の異なる手話を使用しています。最近は、ろう者や手話通訳者が集まる世界会議などにおいて国際手話(International Sign)が用いられるようになってきました。最近使われている国際手話は欧米の手話を基にしたピジンですが、それぞれの国や地域のろうコミュニティで使用され継承されている手話(Sign Language)は、日本語や英語などと同等で、独立した文法をもつ自然言語です。

2006年に制定された「障害者の権利に関する条約」は、手話の使用を認め、促進しています。手話は音声言語と同等の言語であることを明確にし、締約国に手話の学習を促進すること、ろうコミュニティの言語的アイデンティティを促進することを義務付けています。手話に早期にアクセスすること、手話による教育を受けることがろう児・者の成長と発達には欠かせないものであり、国際的に合意された開発目標の達成に不可欠であるとしています。言語と文化、つまり手話とろう文化を認め尊重することです。 

「9月23日手話言語の国際デー」はこれらの目標を世界中の国々と人々に周知し、達成するための記念日です。2018年から世界各国・地域でさまざまなイベントを通して手話言語の国際デーを祝っています。2020年手話言語の国際デーのテーマは「手話は皆のために!(Sign Languages are for Everyone!)」です。

 

そして9月21日~27日は、「International Week of the Deaf(国際ろう者週間)」です。

国際ろう者週間は、1958年9月にイタリアのローマで始まりました。世界ろう連盟(WFD)の最初の世界会議が開催された月を記念して、9月の最後の1週間を「国際ろう者週間」として、ろう者が団結し、ろう者が日常生活で直面する様々な課題について考えさせるための世界的な活動へと発展してきました。毎年、世界中のろうコミュニティによるさまざまな活動が行われ、各国の政府や行政をはじめ市民に向けたアピールに取り組んでいます。2020年国際ろう者週間のテーマは「ろう者の人権の再確認(Reaffirming Deaf People’s Human Rights)」です。

 

手話の認知はろう者の人権(言語権)の認知と一体です。宮城県では、2021年施行を目指す「障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(仮称)」と「手話言語条例(仮称)」の準備検討が進んでいます。現在、二つの条例の中間案に対するパブリックコメントを募集しています。募集期間は、10月20日(火)までです。ぜひ、下記のURLからアクセスして皆さんの意見を届けてください。

https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/syoufuku/jourei-public-comment.html

 

2020年度も下半期となり、いよいよ「Withコロナ」時代が始まった感じです。年度当初のパンデミック恐慌から、感染防止のための活動自粛、長期にわたる自粛に対する疲れ、そして、いまこの状況を受け入れる体制づくりというように、社会の様子も変化してきました。いまだ集会型の行事を再開するめどはたっていませんが、新しい生活様式の導入に合わせて、新しい全通研活動様式を考えていきたいと思います。

 

全通研は、人から学ぶことや集団で学び合うことを大切にしてきました。学びも話し合いも「対面」が基本でした。それは、全通研の会計からも読み取ることができます。これまで、「旅費」は全通研経常経費の約22%を占めていました。ところが2020年度予算では経常経費の約5%にとどまっています。つまり、2020年度事業においては全通研理事等の移動・宿泊がほとんどないことがわかります。集会型の事業を自粛し、Web会議やWeb学習会に切り替えているからです。新しい生活様式に基づいた新しい全通研活動様式は、対面とWebを併用するハイブリッド方式になっていくように思います。

同様に手話通訳においても、対面の通訳と、遠隔手話通訳併用のハイブリッド通訳になる日も近いことと思います。こちらも新しい手話通訳様式です。私たちは活動を続けるかぎり、良いものを守り継承し、そして新たなものを探り定着させていかなければならないのでしょう。新しいものには新しい倫理が必要です。新しい倫理を皆さんとともに考えていきたいと思います。

 

宮澤典子(宮通研会長/全通研国際部長/WASLIアジア地域代表理事)

 

【参考】

全日本ろうあ連盟HP: https://www.jfd.or.jp/2020/09/23/pid21106

世界ろう連盟HP: http://wfdeaf.org/get-involved/wfd-events/international-week-deaf/internationalweekofthedeaf/

国際連合HP: https://www.un.org/en/observances/sign-languages-day