サマーフォーラム in やまがたと手話言語国際デー

 8月21日(土)「第54回全国手話通訳問題研究集会~サマーフォーラム in やまがた」が開催されました。昨年の石川集会は、コロナ禍のため残念ながら中止となりましたので、2年ぶりの開催です。今年も新型コロナウイルス感染拡大は収束せず、会場とオンラインを併用したハイブリット方式による集会となりました。全通研集会の形態としては初めての試みです。日程も従来の形式とは異なり1日だけであり、討論形式の分科会はなく講座のみとなりましたが、全国から1,376人の参加がありました。この参加者数もここ数年に比べるととても多く、オンラインの利便性の効果かと思えます。準備に準備を重ねて開催にこぎつけた山形の実行委員会の皆さまに心から感謝申し上げたいと思います。

 

全国手話通訳問題研究集会は、1968(昭和47)年に福島で第1回全国手話通訳者会議として開催されてから、毎年開催されてきました。「全国手話通訳問題研究会」が発足したのは青森で第7回集会が開催されたときでしたが、集会の回数は第1回から通しで数えられています。宮城では2007年に仙台市国際センターを会場に第40回集会を開催しました。

全通研には集会担当理事がいます。集会開催の前々年度には全通研研究部付事務局員という立場で集会の検討を始め、前年度からは理事として、開催地実行委員会の中心的な役割を担います。実行委員会は、会場の手配をはじめ、記念講演や講座の講師の検討などを行います。実行委員会からの提案は、主催団体である全通研や全日本ろうあ連盟でさらに協議され、何度も何度も話し合いを重ねて形作られていきます。

 

今回の記念講演は、羽黒山宿坊「大聖坊」13代目羽黒山伏である星野文紘先達による「いのち・自然・いのり-そして人のつながり」でした。まさに「山形!」という講師です。山伏とは、神や仏や自然と人をつなぐ役割を持ってい人です。山伏のことを修験者といいますが、日本には6世紀ごろに始まった修験道があります。この「道」は行き止まりがなく、どこまで行っても答えがありません。頭で答えを考えるのではなく、そこに身をおいて感じる世界なのだと言います。「今やっていることが次につながる」という言葉が印象的でした。通訳者が集まって実践を積み重ねていくうちに「通訳道」というものも生まれるのでしょうか。私たちはそこから何を感じ取ることができるでしょうか。

 

記念講演の後は、講座が3本ありました。第1講座は、ウェザーハート災害福祉事務所代表の千川原公彦氏「被災地の様子と助け合い~災害の備えについて考えよう」です。近年災害が多発していますが、被災地で支援活動をするボランティアやボランティアセンターの役割と意義が語られました。集会の数日前に西日本で豪雨災害が発生していたこともあり、無関心ではいられない話題でした。第2講座は、全日本ろうあ連盟石野富志三郎理事長による「コロナ禍のろう者~情報保障の課題」でした。新型コロナウイルス感染症の発生から今日までの連盟の取り組みが報告されました。これまでどおりの対面の集会や手話通訳派遣が困難になりオンライン化が進むなか、ICTになじまない人が社会参加から取り残されないための課題について話されました。第3講座は「コロナ禍を経て未来を切り拓く全通研」で、全通研の3人の講師が分担して話しました。1コマ目は渡辺正夫会長による「全通研の歩み」、2コマ目は宮澤が「ICTと手話通訳」を話し、3コマ目は米野規子理事が「手話通訳者の健康と労働に関する実態調査」について話しました。

 

式典や記念講演、第1講座は山形テルサから、その他の講師は各自宅からの登場でした。参加者の視聴形態も個人視聴あり集団会場視聴ありでした。しかし、集会開催間際になって、新型コロナウイルス感染第5波が到来し、当初予定されていた集団視聴会場を急遽中止にする地域もあり、間際まで変更が続きました。宮城の参加者は25人で、4名が集団視聴会場から参加しました。1日に短縮されても、オンラインでも、とにかく集会が無事開催できたことは何より喜ばしいところですが、やはり講演を聞いてくれる皆さんの顔が見えなかったのは、少し寂しいです。来年の茨城集会は、コロナの心配なく皆さんと一同に会することができる集会となるよう、日々感染防止に取り組みたいと思います。

 

さて、9月はろう者と手話の月です。

今年も、9月20日~26日が「国際ろう者週間(International Week of the Deaf People)(IWDP)」で、今年のテーマは「ろうコミュニティの繁栄を祝って」です。9月に開催される理由は、9月が第1回WFD 世界ろう者会議が開催された月であり、これを記念しているためです。国際ろう者週間の期間中は日替わりでテーマが設けられています。詳しくは全日本ろうあ連盟HPをご覧ください。(https://www.jfd.or.jp/info/2021/20210814-iwdp-themes-ja.pdf)

そして、9月23日は「手話言語の国際デー」です。2021年のテーマは「私たちが手話をするのは人権である(We Sign for Human Rights)」です。手話を母語や第一言語としている人たちにとって、手話を使うことは言語権の行使です。聞こえない人のためには字幕をと考えられがちですが、字幕は日本語ですね。情報アクセスのためのひとつの方法ではありますが、言語を保障することとは違います。オリンピックやパラリンピックの開閉会式には手話がありました。パラリンピックを取り上げる番組にはろう者が登場しました。Eテレの開閉会式の中継では、手話母語話者による手話通訳が登場しました。日本が大きく進化した出来事だったと思います。これを好機に今後ますます手話を目にすることができる社会になりますように。

 

会長  宮澤典子