新しい年は「集」「繋」「笑」でありたい

 

年頭にあたり、新年のご挨拶を申し上げます。

 

日本漢字能力検定協会が毎年「今年の漢字」を募集し、12月に発表しています。2021年の漢字は「金」でした。「金」が1位になったのは4回目と最多だそうです。オリンピック、パラリンピックが日本で開催され、連日「金」メダル獲得のニュースが流れたりと明るいニュースがありました。一方、コロナ禍による飲食店や従業員支援のため休業支援金や給付金などお「金」の文字を目にする機会も多々ありました。いずれにしても、2021年もコロナの話題が満載でした。

 

私の2021年の漢字といえば「隔」でしょうか。2021年はコロナ禍の副産物として遠隔手段が拡大しました。宮通研でも会議や学習会をオンラインで実施しましたし、夏に開催された全国手話通訳問題研究集会inやまがたは、全通研集会としては初めてのオンラインによる集会となりました。4月からはフリーランス生活ですが、ほとんど毎日のように遠隔で会議をし、遠隔で通訳をし、遠隔で講義をしたりしています。まさしく「隔」漬けの毎日でした。

 

直接会うことが制限されるなかで、遠隔システムは有効な働きをしてくれます。国際的な会議や研修会では特に威力を発揮してくれて、これまで年1回顔を合わせるのがやっとだったWASLIの理事会は毎月開催されるようになり、アジアのイベントも数回開催することができました。世界がとても近くなったように思えます。しかし、ICTを活用せざるを得ない状況は、機器や技術を持つ人と持たない人の間に格差をもたらします。遠隔システムは、メリットとデメリットをよく理解したうえで、味方にすべきツールでしょう。All or Nothingではなく、選択肢が一つ増えたととらえて適度に活用したいものです。加えて、遠隔による手話通訳については、そのあり方の検討が急務だと思います。

 

新しい生活様式としてマスクの着用が定着しました。マスクは聴覚障害者のコミュニケーションには天敵ですが、赤ちゃんの発達(人の表情と感情を認知する能力の発達)にも影響を及ぼすそうです。赤ちゃんは表情を区別する能力を身につけ、それをもとに相手の感情を理解する能力を獲得していきます。「表情」はヒト固有のもので、目と鼻と口の調整により決まります。手話では目や眉や口の動きは言葉の機能を果たします。マスクで隠すことなく顔を見せ合うことは人としての自然なコミュニケーションを支えます。今後さらにさまざまなツールや形態が登場するかもしれません。それでも、それらに使われるのではなく、使いこなしながら、人としての豊かなコミュニケーションを取り戻していきたいものです。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 会長  宮澤典子